お知らせ
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作成日:2023/07/23
令和3年(行ヒ)第285号 行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件 その2



令和5年7月11日 第三小法廷判決

誤解を生まないためにも、多くの人に判決文をお読みいただきたいなと思います。


「裁判官宇賀克也氏の補足意見
3……
…経済産業省は、早期に研修を実施し、トランスジェンダーに対する理解の増進を図りつつ、かかる制限を見直すことも可能であったと思われるにもかかわらず、かかる取組をしないまま、上告人に性別適合手術を受けるよう督促することを反復するのみで、約5年が経緯している。この点については、多様性を尊重する共生社会の実現に向けて職場環境を改善する取組が十分になされてきたとはいえないように思われる。
4……

裁判官渡邉惠理子氏の補足意見
……
 しかしながら、女性職員らの利益を軽視することはできないものの、上告人にとっては人として生きていく上で不可欠ともゆうべき重要な法益であり、また、性的マイノリティに対する誤解や偏見がいまだ払拭することができない現状の下では、両者間の利益衡量・利害調整を、感覚的・抽象的に行うことが許されるべきではなく、客観的かつ具体的な利益較量・利害調整が必要であると考えられる。……女性職員らの守られるべき利益(上告人の利用によって失われる女性職員らの利益)とは何かをまず真摯に検討することが必要であり、また、そのような女性職員らの利益が本当に侵害されるのか、侵害されるおそれがあったのかについて具体的かつ客観的に検討されるべきである。
……
 また、原審の認定事実によっても、本件説明会において女性職員らが異議を述べなかったことの理由が明らかではない。上告人が男性であると認識していたために、上告人が女性トイレの利用を希望することを知って戸惑う女性職員が存在することそれ自体は自然な流れであるとしても、本件説明会において女性職員らが異議を述べなかった理由は一義的ではなく複数あり得るものである。……
 原判決が、こういった女性職員らの多様な反応があり得ることを考慮することなく、「性的羞恥心や性的不安などの性的利益」という感覚的かつ抽象的な懸念を根拠に本件処遇および本件判定部分が合理的であると判断したとすると、多様な考え方の女性が存在することを看過することに繋がりかねないものと懸念する。
……」

ここから私見ですが、
女性職員らの多様な反応があり得ることを考慮することなく、感覚的かつ抽象的な懸念を根拠に判断したとすると、多様な考え方の女性(本件では女性)が存在することを看過することに繋がりかねない…
とかく、マジョリティ、マイノリティと二極化、または、抽象的、一義的になりがちですが、多様な共生社会においては、具体的かつ客観的な真摯な検討が必要ということでしょうか。
平易な言葉でいうと、個人に落とし込む、顔がみえるということでしょうか。
考えさせられます。

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