「日本人の海外移住者の傾向とその背景」
人口動向、人口変動要因に関する定量分析から
佐々井司・福井県立大学教授(国立社会保障・人口問題研究所出身) 2023.04.26日本記者クラブにて
散々、いわれている少子化、新しい視点をご紹介、整理します。
人口は 出生数、死亡数、国際人口移動の3点で決まる。
人口概況では、2005年前後に出生数と死亡数がクロスし、以後、出生数は減少、死亡数は増え、
毎年、6割ずつしか維持できず、100万人前後で減少すると推計できる。
都道府県別にみると、コロナ禍までは、東京を除き人口増加は7県、外国人人口に依存していた。
働き盛りの年代が補ってくれていたが、コロナ禍後は減少が目立ち、今後どうなるかはわからない。
注目して欲しいのは、日本人の海外移住者が増加していることである。
海外在留邦人は、140万人強。
これまでは、長期滞在者が多かった。ビジネス目的で男性、アジア中心であったが、
永住者となると、女性が多く、年代として、20歳未満、40歳代、と若い年代に偏る傾向が見られ、コロナ禍に関係なく増えている。
北アメリカ、西ヨーロッパ、オセアニア…。
これは何を意味しているのか、ここを議論してもらいたい。
ワーキングホリデーや留学がきっかけで、そこで自分の居場所やパートナー、仕事をみつけて永住となっているのかもしれない。
私見ではあるが、
コロナ禍で、日本の抱える問題が一気に表面化し、若い人が諦観、閉塞感を感じているのかもしれない。
その中で、女性の行動力の旺盛さで、海外を目指し、生活するということが数値の背景にあるのかもしれない。
日本の低出生と海外の永住者の多くを女性が占めているということは、ある一定の病巣があると思っている。
一番、大きいのは、度々言われるジェンダー格差、
女性のほうが困りごとが多いのではないか。
しかし、女性が息苦しい、生きづらい、の隣には、男性の息苦しさがあり、結婚がおこりにくくなり、子どもをもとうという気持ちもおこりにくい。
そういった構造がずっと続いている。
それは、仕事、賃金、年金、将来に対する多くの見通しの悪さがあり、
ジェンダー問題だけで説明できるものではない。
一方、100歳以上の人口は、9万人強、うち、女性は88.6%
年金の不安は女性のほうが大きいだろう。
最近、若い人から「長寿リスク」という言葉をきき、自分は衝撃を受けた。
若い人がそういう感じをもつ社会はどうなのか。
そう思う若者が増えない社会にする必要がある。
確かに婚姻率と出生数と関係はあるが、婚姻すれば、子どもを生んでもらえるという幻想は捨てたほうがいい。
今日の国難は
「本当に人口減少が原因なのか?」という冷静な問いかけが必要。
人口減少は、根本的な問題ではない。
「労働力不足」を、人口減少が大元の原因のようにいわれているが、本当にそうなのか、
何が問題で「労働力不足」になっているのか、考え直す必要がある。
人口減少が不可避の社会でも、人々が自律して生活を続けられることが最も重要。
人口減少を見据え、社会構造を変えていく そして
社会の変化にフレキシブルに対応できる人材を育成していくことが必要。
海外永住者、女性が増えている現実は、衝撃でした。
(確かに、自分に置換えると、若くして、海外に居場所を見つけたら、永住するかもしれません。)
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作成日:2023/05/19
「人口減少 80万人割れの衝撃」U