お知らせ
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作成日:2023/05/16
「人口減少 80万人割れの衝撃」T



筒井淳也立命館大学教授(家族社会学、計量社会学)2023.4.24日本記者クラブにて

「日本における少子化対策の評価とあるべき方向性」

出生年代ごとのグラフから、出生率の低下は、20代出生率の大幅低下を30代出生率が補いきれなかったと見ることができる。

人口が多かった団塊ジュニア世代、就職氷河期世代の未婚化が進んだこと、
累積出生率が最低レベルであったことがわかる。

有配偶者対象の子育て支援(特に保育)は進んだが、

若者(特に独身者)対象の支援が、少子化対策として、あまり、注目されてこなかった…。

出生数という数字的ショックに政治は反応しがちで、予算のつく目立つ政策に世論も政治家も報道も注目しがち。


例えば、「若者が安心して、結婚して子どもを産み育てるにはどうしたらいいか」という問いをたてると

目標となる状態から「逆算」して、総合的、長期的な政策体系を考える。

個々の政策を個別に展開するのではなく、総合的かつ長期的に一環した政策パッケージを考える。

最近まで、全般的な働き方改革は、少子化対策と結びつけられなかった。
働き方改革は、過労死防止から始まったが、労働時間、雇用の柔軟性、男女雇用均等などは
少子化対策と密接に結びついている。
育休、保育、働き方、賃金・昇給制度、男女賃金格差、税、社会保障制度などはつながっており、全体的にどういう状態をめざすのかという観点から体系化していく。

日本の政治・政策の特性は、他国からも指摘されるように「非一貫性」
例えば
1986年 男女雇用機会均等法  同年、労働者派遣法
やりようによっては、うまく設計できたが、結果として、非正規雇用拡大となった。
1986年、第3号被保険者制度、1987年配偶者特別控除 と専業主婦、主婦パートが不利にならない制度を導入。
1992年、育児介護休業法を導入するも、1994年ILOパートタイム労働条約(均等待遇)批准せず
1994年 エンゼルプラン 1996年 派遣業種拡大…

政策同士が打ち消し合い、

共働きを促進する政策と同時に、
性別分業(低賃金非正規雇用)を維持する政策を展開。
子育て支援政策は導入されるが、雇用安定政策は後景化。

雇用安定、賃金上昇、男女雇用均等、賃金格差縮小は、スローガンにしかなっていない。
各種政策の有機的な連携が必要。
結果が現れるまで時間がかかり、因果関係がわかりにくいが、政権を超えた持続的な取組みが必要。

・働き方改革
・若者への生活支援
・少子化を前提とした医療・介護システムの効率化や移民のスムーズ、真っ当な形での労働力活用

国際比較でみると
例えば、公的雇用の多い社会では、女性が安定したキャリアを積むことができる。
北欧など、公務員は女性のイメージが強く、公務員であれば、キャリアや家庭との両立がしやすい。
しかし、日本はOECDでは、公務員の人数が少なく、女性の割合も少ない。
「ジョブ型」雇用システムは、キャリアの中断や転職がしやすく、女性の就業と賃金格差の圧縮を進めやすいが
日本の場合、女性活躍を見据えて「ジョブ型」雇用をとりいれているわけではない。
まだまだ、日本の大企業はメンバーシップ型、無限定型が占め、
中小企業は、雇用を通じた生活保障で、政府が支援するのは、企業であり、労働者を解雇しないで欲しいという政策。
北欧型は、政府が支援するのは企業ではなく、直接、労働者。失業が増えると政府が保障。
こうした施策も社会の特性の違いを知り
本来は、時間をかけ、議論を重ねるべきこと。

そうはいっても時間に猶予はない。

10〜20年後の安定した生活が男女ともにある程度予測できること。
共働き(二人とも正社員)でやっていける賃金水準。
(日本は本当の意味の共働きは成熟してこなかった)
女性が40歳〜60歳になってもキャリアを継続できるという確信をもてるか 結婚、出産しても職業人生が大きく変わらないという見込みを得られるかどうかを目標に逆算して政策を立てる。
政策は、短期・長期といった区分ごとに理解、評価する。

100点満点の政策はないだろうが、
政府は、
結婚、出産、失業、どんなライフイベントがあったとしてもまあそんなに困らずに生活できますよという安心感、方向性をメッセージとして欲しい。
空手形にならないようじっくり長期的に取り組みますという「コミットメント」が欲しい。
実現をしなかったら責任をとるという覚悟、言葉の重みが、
世の中を動かすと思う。



大変、目の覚めるようなお話でした。
働き方改革、女性活躍、同一労働同一賃金に関わる身としては、
こころして取り組みたいと思います。


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